【開催報告】NIC-Japanセミナーシリーズ:「FCE(外国学歴・資格評価)研修特別プログラム」※講演資料・第1部動画リンク掲載
NICの活動
※今回のプログラムで使⽤した資料は以下からダウンロードすることができます。
「FCE(外国学歴・資格評価)研修特別プログラム(2025年9⽉26⽇)」【講演資料(第1部)(日本語:01、02、03)】
また、本プログラム第1部の動画は、YouTubeで2026年3月末までご覧いただけます。
本プログラム参加募集時の告知ページはこちらから閲覧できます。
高等教育資格承認情報センター(NIC-Japan)は、2025年9月26日(金)にNIC-Japanセミナーシリーズ「FCE(Foreign Credential Evaluation:外国学歴・資格評価)研修特別プログラム」を開催しました。
NIC-Japanは、学生や研究者の国際的なモビリティ向上を目的とした高等教育資格の円滑な承認に資する情報提供活動の一環として、海外の教育制度や資格審査の事例など、資格承認にまつわる諸テーマについて国内外の有識者よりお話しいただく「NIC-Japanセミナーシリーズ」を2021年より開催しています。
今回は、初めての試みとして第1部をハイブリッド形式、第2部を対面によるワークショップ形式で実施しました。第1部にはオンライン・対面を合わせて約320名が参加し、第2部(対面形式)には国内の高等教育機関等から35名の参加がありました。
【開催の目的】
NIC-Japanは、外国の学修履歴を有する者からの出願資格・入学審査等を行う大学等の教職員を対象に、留学生の受け入れに係る外国学歴・資格評価人材(以下、外国資格評価者という)の育成を目的とした、国内初の大規模研修として本プログラムを実施しました。具体的には、①世界規約・東京規約の精神に基づき、②学校教育法等の法令を理解し、③適正な手順及び方法で外国資格評価を行うことができる専門職員の養成、を支援することを目指して、本プログラムを企画しました。また、本プログラムを通じて、研修受講者を中心とする日本における外国資格評価者間の情報共有を促進するための、恒常的な交流プラットフォームの形成に向けた契機としたいと考えています。
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会場風景 |
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ネットワーキングの様子 |
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質疑応答 |
【概要】[第1部・ハイブリッド形式]
▷セッション①「外国での学習歴を有する者(外国出身志願者)の出願資格審査に関する調査」について
登壇者:堀田 泰司 (高等教育資格承認情報センター シニアアドバイザー [SA])
堀田SAは、外国出身志願者の出願資格審査に関する調査結果を説明し、日本の大学における審査体制の課題を指摘しました。改善策として、①ガイドライン整備、②人材育成の制度化、③外部支援の強化、④大学間ネットワークの構築が提案されました。今後は「透明性・再現性・説明可能性の向上」と「誤認・遅延の縮減」が重要であり、高等教育全体での意識共有が必要であることを強調しました。
▷セッション②「アジア地域の学位・資格のFCEをめぐる現状と課題、問題点」
登壇者:孟冬冬氏(ノルウェー高等教育・技能局 [HK-dir]シニアアドバイザー)
孟氏は、ノルウェーのNICであり、所属先であるHK-dirの業務概要を共有した後、近年増加している中国国内の公立学校の国際部や私立の国際高校からの留学生の出願書類や資格等について、中国の現状を交えながら具体的に解説しました。次に、証明書類の真正性を確認するための様々な手段について紹介しました。証明書そのものの真正性のみならず、当該学位を授与した教育機関やプログラムが政府から正式に認証されているかを確認することの重要性も指摘しました。最後に、実際に提出された偽造の学位証明書のサンプルを共有し、それらを用いて真偽を見極めるポイントを解説すると、参加者からは驚きや戸惑いの声が上がりました。
▷セッション③「日本におけるFCEをめぐる現状と課題、問題点」
登壇者:星 明廣氏(公益財団法人アジア学生文化協会 [ABK] 国際教育支援事業部長)
星氏は、ABKが外国学生の学歴判定に係る業務を主に日本国内の13大学から受託し、年間約200件の書類を取り扱っていることを説明しました。さらに、外国学生の願書受付処理業務も受託しており、年間約2,000件を処理していることを紹介しました。続いて、外国の大学が発行した成績証明書やディプロマサプリメントのサンプルを共有し、学校教育法に基づいて大学入学資格を判断する際のポイントを解説しました。その上で、日本における現状の課題として、FCEの重要性に対する認識を共有し、事案をデータベース化するとともに、情報共有のためのネットワークやプラットフォームの構築が求められていると総括しました。
▷Q&Aセッション(進行:森 利枝センター長)
登壇者:孟 冬冬氏(HK-dir)・星 明廣氏(ABK)・堀田 泰司シニアアドバイザー[SA](NIC-Japan)
オンライン参加者・対面参加者の双方から質問フォームを通じて多数の質問が寄せられ、各登壇者による回答が行われました。特に、中国の複雑な教育制度に関する質問が多く、孟氏が一つ一つ丁寧に回答しました。さらに参加者からは、世界の教育制度や教育資格に関する最新データをワンストップで確認できるデータベースがあるかとの質問が寄せられました。これに対し星氏と堀田SAは、各国の教育制度は頻繁に変更されるため、常に最新情報を提供できるデータベースは存在しないと思われること、したがって以前に同様のケースを調査した場合であっても、必ず最新の情報を再度調査・確認することが不可欠であることを強調しました。
[第2部・対面形式]
参加者が8つのグループに分かれ、セッション④のワークショップでは、中国、ベトナム等の各種証明書の資料(事例)を用いたFCEの演習が行われました。続くセッション⑤では、参加者間で所属大学におけるFCEの現状や課題について意見交換が行われ、改善に向けた活発な議論が交わされました。
▷セッション④ ワークショップ(演習)資料(事例)を用いたFCEの演習(中国、ベトナム、ミャンマー、ネパール等)
登壇者:孟冬冬氏(ノルウェー高等教育・技能局 [HK-dir]シニアアドバイザー)
コメンテーター:堀田 泰司シニアアドバイザー[SA](NIC-Japan)
孟氏から、HK-dirにおけるFCE業務の具体的な手順、確認時の注意点、情報ソース等が紹介された後、中国の教育制度、高等教育、会考・高考等に関する説明がありました。続いて、中国、ベトナム、ネパール等の卒業証明書や学位証書の資料(事例)を用い、各グループで確認ポイントに沿って検証する演習を、ディスカッションを交えながら実施しました。
▷セッション⑤ グループディスカッション:FCEの課題、問題点及びその解決に向けた討議
進行:堀田 泰司シニアアドバイザー[SA](NIC-Japan)
各グループでは、FCEに関して参加者の所属大学において必要とされる事項や、制度的に必要と感じる点を論点として、課題の改善に向けた意見交換が行われました。その後の全体会では、人材育成や情報共有の必要性、制度理解の不足、業務継続性の問題等が課題として挙げられました。さらに、ネットワークの構築や専門人材の確保の必要性も強調されました。
【総括(森 利枝センター長)】
最後に森センター長から、今回のFCE研修特別プログラムを通じて得られた3つの気づきとして、①情報の重要性、②例外等細かい情報の重要性、③教育制度が常に変化している現状、について説明がありました。日本の大学においては、本来課題として認識されるべきFCEに対する問題意識が十分に醸成されておらず、その重要性の理解も十分ではない現状があることから、今後はこの課題の重要性を理解し、適切に対応できる大学関係者を増やすことが重要であると総括しました。




